オープンソース コミュニティのためのバーチャル イベントの提案
はじめに
COVID-19のパンデミックは世界中で人々のあらゆる生活や産業に影響を及ぼし、カンファレンス、イベント、ミーティングなどが軒並みキャンセルや延期になっています。Linux Foundationのイベントチームは、安全に運営できそうもないイベントのキャンセルや延期の交渉に奔走しています。わたしたちは、コミュニティやスタッフの健康と安全を第一に考えています。
しかし幸いなことに、直接安全に開催できなくなったイベントでも、バーチャル イベントを利用することでコミュニティがつながり、貴重な情報の共有やコラボレーションが可能になります。対面式の集まりほど強力ではありませんが、現在利用可能なさまざまなバーチャル イベント プラットフォームが各種の機能を提供し、貴重な対面体験に可能な限り近い体験ができるようになっています。コミュニティのメンバーからもプラットフォームやサービスについて提案を受け、イベントチームが数週間にわたって評価してきました。
過去数週間にわたって多くの可能性を調査した結果、Linux Foundationは、さまざまなプロジェクト コミュニティの各種ニーズに対応できる4つのバーチャル イベント プラットフォーム(1つは小規模な開発者ミーティング用のツール)を特定しました。わたしたちの目標は、大規模から小規模までの仮想的な集まりのために、仮想環境で可能な限り多くの現実世界の経験を得られる最良のオプションを決定することでした。86のバーチャル イベント プラットフォームを評価した後、貢献したいという思いを込めて、わたしたちの学んだことを共有したいと考えました。
以下は、LFさまざまな規模の対面イベントを最もよく再現できる機能があることを基準にして、わたしたちが使用する可能性のあるプラットフォームをリストアップしたものです。これらの情報を共有することで、コミュニティのどなたかのニーズに沿うものが見つかったり、候補を探している方の時間が節約できれば幸いです。プラットフォームを評価する場合、営業担当者と話し合ったり、デモを体験したり、価格を確認したり、機能を交渉したりするのに数週間かかります。
リストにあるプラットフォームを選択した理由
今日の市場では、さまざまなバーチャル会議ソリューションが提供されています。ソリューションごとに、価格、機能、スケーラビリティ、テクノロジー インテグレーションのポイントが異なります。わたしたちが調べたすべての単一のプラットフォームとソフトウェア ソリューション(オープンソース ベースのソリューションを含む)のリストはこちらで確認できます。これらのソリューションのいずれかが、みなさんの組織のニーズにより適しているかもしれません。
ただし、バーチャル イベント プラットフォームを見つけることは、バーチャル イベント パズルの1ピースにすぎません。バーチャル イベントをどのように計画、構成、実行するかは、コミュニティの参加を成功させるために重要です。わたしたちは、ACM Presidential Task Forceがまとめた “Virtual Conferences – A Guide to Best Practices” というガイドを見つけ、これはバーチャル イベントを実行するコミュニティに実践者のヒントを提供していると思いました。
わたしたちの目標は、次の3つの要件を満たせるようなソリューションを見つけることでした。
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- 必要なコンテンツを配信できる機能
- 参加者が互いにつながり、コラボレーションできる機能
- これらのイベントを経済的にサポートする企業に対し、プラットフォームでスポンサーのメリットを提供できる機能
これらの要件があるため、現在普及しているZoomなどのWeb会議ソリューションにはあまりフォーカスを置きませんでした。ただし、シンプルなWebソリューションを探しているのであれば、一般的に使用されているWeb会議プラットフォームは、小規模なバーチャル会議をすばやく簡単に準備できる選択肢でしょう。バーチャル イベント プラットフォームの全機能が必要なケースは少ないでしょう。
以下のような素晴らしいオープンソース オプションもあります。
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- Jitsi Meet:ストリーミング、画面共有タブ、ビデオ共有など、他のソリューションにはない便利な機能がいくつかあります。
- Open Broadcaster Software:セッション コンテンツを記録およびストリーミングしたい方向け。会議ツールと組み合わせて使用することもできます。
- EtherPad:わたしたちの多くのコミュニティで使われていて、編集しながら接続や会話ができるビデオ サポートもあるので驚きです。
- Big Blue Buttont:教師や生徒のためにデザインされたものですが、だれでも使えるオープンソースです(家に子供がいる方も多いので、これは便利と思うかもしれません)。
Linux Foundation バーチャル イベント プラットフォームのショートリスト
これらのツールは、複数の同時開催トラック、詳細な出席者の人脈形成やコラボレーションのニーズ、強力なスポンサーなどの要件を持つ中規模から大規模のイベント向けに設計されています。それぞれの料金は、カンファレンス トラックの数、チャットルームや参加者のコラボレーション スペースの数、イベントの長さ、参加者の数、スポンサー ブースの数など、イベントの詳細によって異なります。
これらのイベント プラットフォームはどれも(QiQo Chatを除き)、次の標準機能をすべて備えています。
- Linuxのデスクトップ/ブラウザ(WindowsやMacも)をサポートするWebベース(HTML5)
- GDPRおよびプライバシー規制要件に準拠した登録統合機能
- WebhookやREST APIでSSO(Auth0)やSFDCなどのセキュリティ システムと統合
- ホワイトラベルとして各コミュニティのイベント ブランドに対応
- セッション内でスピーカーとの質疑応答ができる
- 参加者どうしの交流が可能
- 統合されたスケジューリング ツールやアジェンダ ビルダー
- 参加者分析機能:訪問したブース、セッション出席など
- 参加者のエンゲージメントを促進するゲーミフィケーション オプション
- ポップアップ通知(「基調講演が5分後に始まります!」、「[XXスポンサーの]ブースを訪問しましょう」など)
- 稼働時間、冗長性、自動拡張機能を保証
inXpo Intrado
予算が十分あり、ほぼ完ぺきなバーチャル カンファレンス体験を必要とする大規模なイベントに最適です。
InXpo Intradoは、堅牢なホスティング機能を備え、インフラにハイパースケール クラウド プロバイダーを使用して、信頼性と回復力のあるパフォーマンスを提供します。同社はセッションの配信に独自のプラットフォームを使用し、サードパーティのCRMや登録プラットフォームと統合しています。プラットフォーム全体が3Dのバーチャル環境で、堅牢な参加者ネットワーキング オプションやスポンサー メリット(仮想ブースなど)も用意されています。
長所:
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- カスタマイズ性に優れ、臨場感あふれるイベント体験を提供。3D環境とバーチャル ブース(ビデオゲームのように現実世界の展示ホールをVR表現)
- 参加者がすべてのコンテンツにアクセスできる優れたユーザー インターフェイス
- 同時セッションやライブ セッションに関する制限がないため、このプラットフォームではセッションや参加者のキャパシティの上限を心配する必要がない。
- このソリューション プロバイダーは、米国の911コールセンターの98%をサポートできる耐障害性を備えた独自のネットワーク インフラ バックボーンを使用
- サードパーティのプラットフォームやプラグインを必要としないリアルタイム翻訳&クローズドキャプション機能
- 中国国内で実績 — 中国企業が国内のバーチャル イベントを運営するために使用
- 参加者のプライバシー保護を強化。参加者の情報をスポンサーが収集する前に参加者が確認できる「ポップアップ」メッセージ オプション
その他の考慮事項:
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- わたしたちが評価した最も高価なプラットフォームの1つ
- イベントの開始やセットアップに要する時間が長くなる可能性がある
- スポンサー ブースのテンプレートは有料でカスタマイズ可能
- 各自のオープンソース ビデオ ストリーミング/ビデオ会議ソリューションをプラグインすることはできない
vFAIRS
もう少し予算を抑えて3D環境やブース体験を提供したい中規模から大規模のイベントに最適です。
vFAIRSは、中規模から大規模のイベントに適しています。InXpo Intradoと同様に、スポンサー、バーチャル トレード ショー、同時セッション、および参加者のネットワーキングなどの堅牢な機能を多く備えていますが、エントリーコストが抑えられます。独自のセッション配信プラットフォームはありませんが、Zoom統合が組み込まれており、その他のビデオ ストリーミング ソリューションも選択できます。また、さまざまなCRMプラットフォームや登録プラットフォームと統合できます。
長所:
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- 高度にカスタマイズ可能
- カスタマイズ可能なブースによる優れたスポンサー露出とルック&フィール(数十のテンプレートが利用可能)
- 参加者のネットワーク ラウンジやチャット ルーム
- 中国国内で実績
- 組み込みのWebコンテンツのアクセシビリティ:参加者が好みに合わせて色やフォント サイズを変更できる
- サードパーティのソリューションを介してクローズド キャプションを組み込める
- ビデオ配信システムに柔軟性がある
その他の考慮事項:
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- 低価格のこの製品は、InXpoよりもサポートが限定的(Torontoに拠点を置き、海外に多くのスタッフが存在)
- 外部インフラに依存(この点がInXpoとは異なる)
- 大規模なライブ セッションのキャパシティーに制限あり(最大4,000)
- 価格には競争力があるが、ブースの追加やセッションの追加によって価格が上昇する
MeetingPlay
参加者のネットワーキング ツールとしての機能を優先し、スポンサーの「ブース」が要らないあらゆる規模のイベントに最適です。
このプラットフォームは、あらゆる規模のイベントに対応できますが、3Dのバーチャル展示ホールやブース機能はありません。とはいえ、このプラットフォームに組み込まれたスポンサーのメリットは強力で、参加者のネットワーキング機能も優れています。vFAIRSと同様に、Meeting Play独自の統合ビデオ会議ソリューションをコンテンツ配信に使用することも、独自のソリューションを使用することもできます。
長所:
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- 「参加者」の経験に重点を置いている
- AI駆動のコンテンツ、チャットルーム、および参加者の提案:カスタマイズして全参加者向けに行った最初の質問がベース
- アプリ内登録アップグレード オプション(フリーミアム モデル)のゲート型コンテンツで無料の「ホールパス」を提供し、セッション参加に対して登録を要求する
- スポンサー ページが非常に堅牢で、スポンサーが参加者と1対1でチャットしたり、ビデオやデモを表示したり、リソースを共有したりできる
- MeetingPlayの統合型ビデオ ストリーミング ソリューションを使用するオプションと、利用者のアカウントを通じて選択するオプションがある
- 中国国内で実績:中国で多数の顧客をサポートしており、中国国内にある仮想マシンを使って、イベント実行前のテストを行う
その他の考慮事項:
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- 3Dバーチャル展示ホールやブースがない:スポンサーは、参加者とリアルタイム チャットができる動的なページ、ダウンロード可能なリソース、およびデモやウェルカムビデオ用のビデオ プレイヤーを受け取る
- バーチャル イベントというよりはウェブサイトのように見える
- 追加料金なしで一度にできる同時ライブ セッションは2つのみ。彼らは、ほとんどのセッションを事前に録画して”simulive”(疑似ライブ)を行うことを推奨している(録画したものが決められた時間に再生され、スピーカーがリアルタイムで参加してテキストベースのQ&Aを行う。)このプラットフォームで同時実行できるライブ セッションは、最大で8つ
- コラボレーション スペース(スポンサー ブース、参加者者の「会議室」、および複数のスピーカーがいたり双方向通信が必要なライブセッションに使用)は、時間と参加者数によって課金されるため、これらを自由に使用することは少し困難
QiQo Chat
QiQoは、業界イベントが求める各種機能は必要としていない小規模な技術会議に最適です。開発者のミーティングやハッカソンのように、小グループのコラボレーションにフォーカスする場合に最適なオプションです。
QiQoは、参加者のコラボレーションやセッション配信用のZoomラッパーとして機能します。コミュニケーションやコラボレーションのニーズが一方向でなく双方向で、焦点が絞られている小さなイベントに最適です。QiQoのユニークな機能の1つは、Google DocsとEtherpadの両方がQiQoのインターフェースに統合されているため、Google DocsとEtherpadで共同作業できることです。
長所:
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- 低価格
- コラボレーション向けの高度なビデオ会議オプションだけが必要な、小規模ミーティングに適した手頃なオプション。Qiqoの各ライブイベントには、デフォルトで10個のZoom小会議室がある。
- 複数のワークスペースで小グループがコラボレーションをするのに最適:Zoomラッパーとして、複数のディスカッション用小会議室があるイベントの仮想環境を作成する
- コラボレーションと生産性のためにさまざまな統合ツールが組み込まれている:Slack、Google Calendar、Google Docs、Etherpadなど
- Zoomがデフォルトだが、サポートチームが顧客と連携し、Jitsiやその他のビデオ会議ソリューションを使ってこれを設定
- Web配信プラットフォームの可用性に応じて、中国国内で実績
その他の考慮事項:
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- Zoomにコラボレーション機能を追加するシンプルなZoomラッパー:他のビデオ会議ツールでも使用できる
- 非常に限られたスポンサー要素
- 他のオプションに比べてインターフェイスやワークフローが少し難しい:多くのオプションがあるが、「すぐに使える」ことは確実
- コラボレーションに関しては最小限のアプローチ
会議プラットフォーム機能の比較
スクリーンショット ギャラリー
まとめ
今年も40以上のイベントがLinux Foundationイベントの傘下に残っており、いくつかのカンファレンスはバーチャルで開催されるでしょう。これらにはそれぞれ異なる要件があるため、多様なコミュニティをサポートするために、さまざまなオプションと機能が必要でした。わたしたちは、この選択肢のポートフォリオが、わたしたちのさまざまなコミュニティのニーズの多くを満たしていると考えています。わたしたちが検討した他のすべてのプラットフォームのリストやこれらを共有することが、皆様のお役に立てば幸いです。
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